『Destiny』シリーズで知られるBungieが、大きな方針転換を打ち出しました。
2026年9月17日、Bungieのスタジオ責任者Poria Torkan氏と、『Marathon』のゼネラルマネージャーJosh Deane氏が、今後のBungieについて公式声明を発表。
そこで語られたのは、新作の紹介というよりも、近年のBungieが抱えてきた問題を認めたうえでの「スタジオの立て直し宣言」に近い内容でした。
- Bungieは近年「プレイヤーを最優先することを見失っていた」と認めた
- 『Destiny』シリーズは今後も継続する
- 『Destiny 2』で削除された過去コンテンツの復活を進める
- 『Marathon』はPvPvE中心から、PvE・PvPを含む幅広いゲームへ進化
- 開発プロジェクトを絞り、プレイヤー満足度をより重視する体制へ変更
- BungieとPlayStation Studiosの関係も以前より深くなっている
特に興味深いのが、『Destiny』と『Marathon』の両方について、これまでの判断をそのまま押し通すのではなく、プレイヤーの反応を受けて方向転換している点です。
今回はBungieに何が起きているのか、そしてソニー傘下のスタジオとして今後立て直すことができるのかを考えてみます。
Bungieが異例とも言える「反省」を表明
今回の発表でまず驚かされたのが、Bungie自身が近年の運営についてかなり率直に問題を認めていることです。
Bungieは公式発表の中で、ここ数年について、コミュニティとの関係で本来重視すべきものを見失い、結果として信頼や優秀なスタッフを失い、プレイヤーを最優先するという姿勢から離れてしまったという趣旨の説明をしています。
そして新しい経営陣として、その責任を受け止める姿勢を示しました。
- Destinyの長期的な未来を構築する
- Destinyの過去のコンテンツも尊重・復元する
- Marathonを成長させ、持続可能なタイトルにする
- 開発の優先順位をより透明化する
- 計画変更時も含め、コミュニケーションを増やす
単純に「今後は頑張ります」と言っているだけではありません。
Bungieは社内の運営方法についても、競合する複数のプロジェクトを減らし、ゲームを実際に制作しているチームに近いところで意思決定を行い、成功を測る指標についてもプレイヤー満足度をより重視する方向へ変更したと説明しています。
かつてのBungieは『Halo』を生み出し、その後『Destiny』という巨大IPを作り上げた、FPS業界を代表するスタジオの一つです。
それだけに、ここまで率直な声明を出したこと自体、現在のBungieがかなり大きな転換期にあることを感じさせます。
最大のニュースは「Destinyを終わらせない」こと
今回の発表で『Destiny』ファンにとって最も大きいのは、Bungieがはっきりと「Destinyは終わっていない」という方針を示したことでしょう。
『Destiny 2』は長期間運営されてきたライブサービス型タイトルです。
その一方で、ゲームの肥大化などへの対応として、過去には一部キャンペーンやロケーション、レイドなどが「Destiny Content Vault」に移され、現在ではゲーム内から遊べなくなったコンテンツも存在します。
これは長年プレイしていたファンの間でも賛否の大きかった施策でした。
今回Bungieは、その判断がプレイヤーの信頼やゲーム体験に長期的な影響を与えたことを認めています。
過去のキャンペーン・ロケーション・レイドを復活へ
そして今後は、保管庫入りした『Destiny 2』の重要コンテンツを再びゲームへ戻す作業を進めます。
- 過去のキャンペーン
- 過去のロケーション
- 過去のレイド
などが対象になる予定です。
さらに、復活したコンテンツは『Destiny 2』プレイヤー全員が利用できる形を目指していることも明らかにされています。
Bungieによれば、『Beyond Light』以降にゲーム内部のシステムが大きく変わっているため、照明、敵、戦闘、エンカウントなどを現在の『Destiny 2』に合わせて作り直す必要があります。
そのため復活には一定の時間がかかる見込みです。
Destiny復活は「懐古」だけではない
個人的に重要だと思うのは、Bungieが単に昔のコンテンツを復刻して延命しようとしているわけではない点です。
今回の過去コンテンツ復活は、Bungieによればこれから新しいDestinyを作っていくための土台でもあります。
つまり、
↓
シリーズの世界や物語を再びつなげる
↓
そのうえで新しい物語・新しいゲームへ進む
という考え方です。
10年以上続いているシリーズだからこそ、新しいプレイヤーが途中から入りにくくなっている問題もあります。
過去の重要なストーリーがゲーム内から失われている状態を改善できれば、新規プレイヤーがDestinyの世界を理解しやすくなる効果も期待できます。
長期運営タイトルでは「新しいものを追加すること」に注目が集まりがちですが、Bungieは今回、過去を整理し直すことから再出発する方針を選んだように見えます。
そしてもう一つの問題作『Marathon』
Bungie再建を考えるうえで、もう一つ避けて通れないのが『Marathon』です。
『Marathon』は2026年3月にPS5、Xbox Series X|S、PC向けに発売された、Bungieの新たな主力タイトルです。
基本的には、危険なエリアへ入り、アイテムを回収し、生きて脱出することを目指すエクストラクションシューターとして開発されました。
Bungie自身も今回、作品そのものは高い評価を受け、熱心に遊ぶプレイヤーも存在するとする一方で、期待していたほど多くのプレイヤーには届かなかったことを認めています。
ここが非常に重要です。
つまり『Marathon』はゲームとして完全に失敗したという単純な話ではなく、Bungieが次の柱として期待した規模までプレイヤー層を広げられなかった、という状況だと考えた方がよさそうです。
Marathonは「PvPvE専用ゲーム」から方向転換
そこでBungieが打ち出したのが、『Marathon』そのものの遊び方を広げる方針です。
これまで『Marathon』は、プレイヤー同士が戦いながらAIの敵とも戦うPvPvE型のエクストラクションシューターという色が非常に強い作品でした。
しかし今後は、そこだけに縛られないゲームを目指します。
| プレイスタイル | 今後のMarathon |
|---|---|
| 協力PvE | 他プレイヤーとの対戦を中心としない遊び方を拡大 |
| PvP | 対人戦を楽しむモードも展開 |
| PvPvE | 従来の緊張感あるエクストラクション体験も継続 |
つまり、エクストラクションシューターそのものを捨てるわけではありません。
その特徴を残しながら、「このジャンルが好きな人しか楽しめないゲーム」から抜け出そうとしているわけです。
12月アップデートでは常設PvEも追加予定
この方向転換は言葉だけではありません。
2026年12月に予定されている大型アップデート「Symbiosis」では、常設PvEコンテンツをはじめ、ソーシャルスペース兼射撃場、実験的なチームデスマッチなどが追加される予定です。
さらに新しいRunner shell、エリア改修、新規プレイヤー向け導線の改善なども予定されています。
「エクストラクションシューターを極める」
という方向から、
「BungieのFPSアクションを色々な形で遊べるゲーム」
へ近づいていく可能性があります。
なぜBungieはここまで方向転換したのか
今回の発表だけを見ると突然の方針変更にも見えます。
しかし、ここ数年のBungieを振り返ると、その背景はかなり分かりやすくなります。
Bungieは一時期、『Destiny』だけではなく複数の新規プロジェクトを同時に展開し、複数の世界的なフランチャイズを持つスタジオになることを目指していました。
ところが2024年、Bungie自身がその戦略について人材を多くのプロジェクトに分散させすぎたと説明します。
そして大規模な組織再編を実施しました。
- Bungieで約220人の人員削減
- 約155人をSony Interactive Entertainmentへ統合
- 一部の新規プロジェクトをPlayStation Studios側へ移管
- Bungieの開発リソースをDestinyとMarathonへ集中
当時Bungieは、開発規模を急速に拡大した結果、組織そのものが持続可能な規模を超えてしまったことも認めています。
要するに、「Destinyで成功した勢いのまま次々と新しい事業を広げたものの、それを支える組織と収益が追いつかなかった」という構図です。
ソニー買収後もBungieは完全独立ではなくなってきた
Bungieは2022年にSony Interactive Entertainmentの傘下に入りました。
買収当初は、Bungieがゲームの開発やパブリッシングについてかなり大きな独立性を維持する方針が示されていました。
しかし、その後の状況は変化しています。
2024年の大規模再編では、一部スタッフをSIE側へ移し、バックオフィス機能などもPlayStation側と統合する方向へ進みました。
さらにソニーは2025年の決算説明で、Bungieについて、買収当初は独立した環境を提供する考えだったものの、構造改革を経て統合が進み、「よりPlayStation Studiosの一員としての役割にシフトしている」と説明しています。
これはかなり大きな変化です。
Bungieの独立性をかなり維持
現在
SIEとの組織統合を進めながらDestinyとMarathonへ集中
もちろんBungieブランドそのものが消えるという意味ではありません。
ただし、以前のようにBungieが単独で大量の新規プロジェクトへ投資していく形から、PlayStation Studios全体の中で役割を整理していく方向へ進んでいると見ることはできそうです。
ソニーにとってもBungie再建は重要
Bungieの立て直しは、Bungieだけの問題ではありません。
ソニーはPlayStation事業で、従来得意としてきた大型シングルプレイ作品に加えて、継続的に収益を生み出すライブサービスゲームを強化しようとしてきました。
その際、長年『Destiny』を運営してきたBungieのノウハウは非常に重要な存在でした。
しかしライブサービスゲームは、単に良いゲームを発売すれば終わりではありません。
- 発売後も継続してコンテンツを供給する
- コミュニティを維持する
- 新規プレイヤーを増やす
- 既存プレイヤーを飽きさせない
- 開発コストを長期間管理する
といった難しさがあります。
『Destiny』という成功例を持つBungieですら苦戦していることを考えると、ライブサービスゲームがいかに難しいビジネスなのかがよく分かります。
今回の方針転換で良いと思うところ
① Destinyを簡単に捨てなかった
まず評価したいのは、10年以上積み上げてきた『Destiny』というIPを簡単に終わらせなかったことです。
完全新作を作ることばかりに目を向けるよりも、すでに巨大なファンコミュニティを持つIPを大切にするのは合理的でしょう。
特に過去コンテンツの復活は、既存プレイヤーだけではなく、新しくDestinyを始めるプレイヤーにも意味があります。
② Marathonを意地になってPvPvEだけにしなかった
『Marathon』についても、発売時のコンセプトにこだわり続けるのではなく、プレイヤー層を広げる方向へ修正したのは興味深い判断です。
PvPvEの緊張感は『Marathon』の魅力ですが、このジャンルを苦手とするプレイヤーも少なくありません。
BungieはもともとFPSの銃撃感や協力プレイに定評のあるスタジオです。
PvEや通常のPvPまで遊び方が広がれば、「エクストラクションシューターだから敬遠していた」という層を取り込める可能性があります。
③ プロジェクトを広げすぎない
もう一つ重要なのが、現在のBungieが開発リソースを整理していることです。
ゲーム開発費が巨大化している現在、複数のAAAタイトルを同時に開発することには非常に大きなリスクがあります。
DestinyとMarathonという二つのIPへ集中する方が、現在のBungieには合っているように思います。
一方で、まだ安心できる段階ではない
もちろん今回の発表だけで、Bungieが復活したと判断するのは早いでしょう。
Bungie自身も今回、言葉だけで信頼を取り戻せるとは考えていないとしています。
重要なのは今後、
- Destinyの過去コンテンツをどこまで復活できるのか
- 新しいDestinyをどのように展開するのか
- Marathonのプレイヤーを増やせるのか
- アップデートを安定して提供できるのか
- プレイヤーとのコミュニケーションを改善できるのか
を実際のゲームで証明できるかどうかです。
特にライブサービスゲームでは、一度離れたプレイヤーを戻すのは簡単ではありません。
ロードマップを発表するだけではなく、「もう一度遊びたい」と思わせるアップデートを継続して出せるかが最大のポイントになるでしょう。
Bungieは「拡大」から「再建」のフェーズへ
今回の発表を見て強く感じるのは、Bungieが完全に「拡大する会社」から「立て直す会社」へ変わったということです。
数年前までは複数の新規IPを開発し、Destiny以外にも巨大フランチャイズを作ろうとしていました。
しかし現在は状況が違います。
| これまで | これから |
|---|---|
| 複数の新規プロジェクト | DestinyとMarathonへ集中 |
| スタジオ急拡大 | 組織規模を現実的な範囲へ |
| 新しいIPを増やす | 既存IPを立て直す |
| 独立性の高いBungie | PlayStation Studiosとの統合深化 |
| PvPvE中心のMarathon | PvE・PvP・PvPvEへ拡張 |
これは一見すると後退のようにも見えます。
しかし、無理に規模を広げ続けてさらに開発が不安定になるよりも、一度足元を固め直す方が長期的には良い結果につながる可能性があります。
まとめ|Bungie復活の鍵は「言葉」ではなくゲーム
今回のBungieの発表は、近年の問題をかなり率直に認めた珍しい内容でした。
- Destinyは今後も継続
- 削除されたDestiny 2コンテンツを復活へ
- MarathonはPvE・PvPを含めて遊び方を拡大
- 複数プロジェクトを整理し開発を集中
- プレイヤー満足度をより重視
- SIE・PlayStation Studiosとの統合も深化
方向性だけを見ると、かなり現実的になった印象があります。
特に、成功した『Destiny』をもう一度大切にしながら、『Marathon』についても発売時のコンセプトに固執せず改善していく姿勢は、今後のBungieにとって重要でしょう。
一方で、Bungie自身が認めているように、失った信頼は声明一本で戻るものではありません。
Destinyの復活も、Marathonの再構築も、最終的には実際に提供されるゲームの内容で評価されることになります。
『Halo』、そして『Destiny』を生み出したBungieが、もう一度FPSを代表するスタジオとして存在感を取り戻せるのか。
2026年後半から2027年にかけては、Bungieにとってかなり重要な期間になりそうです。
参考資料
- Bungie「The Next Chapter for Bungie」(2026年9月17日)
- Bungie「Marathon Development Update – Nightfall Refresh and Symbiosis」(2026年9月14日)
- Bungie「The New Path for Bungie」(2024年7月31日)
- Sony Group Corporation 決算説明資料・質疑応答



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